Little AngelPretty devil
           〜ルイヒル年の差パラレル

      “クリスマスなんか…”
 


ぱかりと目が覚めて、一番最初に目に入ったのは、
何だかよく判らない白と黒の模様。
あんまり近すぎたんで“何だこりゃ?”ってなったけど、

 「…タマ、おはよーvv」

そっか昨夜とか寒かったんだ、
わあ、今朝も何か寒いなぁと。
懐ろへもぐり込んでた飼い猫さんへご挨拶すれば、

 「…。」

まだ眠いのかお返事はなく、
お愛想のつもりか、お耳がふるると 一回だけはためいただけで。
首を伸ばして壁に掛かってる時計を見れば、
もう7時をとっくに回ってて、どうかしたらば8時に近い。
さすがにもうお外は朝の明るさみたいで、
カーテンに窓枠の形の影が映ってる。
でもママが起こしに来ないなんて珍しいなぁ。

 “土曜日でも“朝ご飯食べちゃいなさい”って起こしにくるのになぁ。”

瀬那くんのお父さんは
自宅に事務所を開いてお仕事している人だから。
依頼があったことへの調べものとか、
人と会う約束になってたりとかして、
土曜もお休みとは限らない。
なので、お母さんも
そんなお父さんに合わせたカレンダーで
日々を過ごしているものだから、
セナくんだけはきっちりと土日がお休みでも
あんまり容赦せずに
“早く起きろ〜っ”とやって来るんだのにね。

 “……もしかして、今日は特別なのかなぁ。”

だって、ただの土曜じゃないものね。
明日と明後日とを足して三連休だしね。
ああでも、年末は銀行とかがお休みに入っちゃうからって、
お仕事も早いめにキリのいいトコまで片付けないととかゆって、
パパもママも、毎年忙しそうにしてるものなぁ。

 「連休…。」

昨日の帰りし、みんなして同じことゆってたなぁ。

 『あ〜あ、いっそそのまま冬休みになればいいのに。』
 『だよな。24日に終業式だけあるなんてなぁ。』

1日だけガッコに来て、その翌日からが冬休み。
毎年大体同じ運びなもんだから、
毎年同じことを言ってる子供らだったりするワケで。
もしかしてところによっちゃあ、
20日が終業式というところもあるかもしれないが、
だとしたら、夏休みが短かったかしたはずで。

 『小学生は全部で何日授業しなさいって、
  そういう日数がきっちりと決まっているからねぇ。』

なので、雪深いところでは冬休みや春休みが長かったりする分だけ、
夏休みを大きく削ってあったりするのだし、

 『それでなくとも、
  よー判らんかった“ゆとり教育”のツケで
  学力が大きに低下したじゃんかっつって、
  大人たちは大慌てしてっからなぁ。』

聞いた話では、
授業数を増やしなさいとの指導が入ったもんだから、
ガッコによっては土曜のお休みを返上する傾向もあるそうな。
そんなような、小学生らしからぬ見解を語った蛭魔くんも、

 『三連休ったって、どうせ俺は賊学でアメフト三昧だけどもな。』
 『…クリスマスの用意はしないの?』

ん〜、父ちゃんがツリー飾ってたから何か考えてんじゃね?と、
あんまり関心なさそうな言い方をしていたし、
いつものように葉柱さんがバイクで迎えに来たのへ
遅せぇ!とか怒鳴って駈けてっちゃったんで、
それ以上はお話も出来なくて。

 “…クリスマスさえ そんな扱いじゃあねぇ。”

アメフト大好きの蛭魔くんだもん、しょうがないよね。
進さんたちも、
一月になったらすぐ“ライスボウル”ってゆーのがあるから、
大人の、社会人のチームとの試合だから、
怖くはないけど油断は禁物ってゆって、毎日練習頑張ってるもんね。

 「…しょーがないよねぇ。」

今日は連休の最初の日。
ちょっと寒いけど、それでもね。
クリスマスの準備とか、新年の準備とか、
皆みんな忙しいんだもの、セナもいい子でいないとね、と。
御年9歳で、なかなか堂に入った遣る瀬ない溜め息をつくセナくんで。

  ……って、あ。
  あれれ、確か 今日って、そうだったよねぇ?

ママが起こしに来ないのは、
今日くらいは好きにさせてくれててなのかも知れないけど。
でもでも、いつまでも寝ててもいられないのはセナも同んなじ。
お布団から えいって身を起こせば、
タマが“あらもう起きるの?”と問いたげに
布団に寝転んだままで首だけよじって見上げて来る。

 「ふやや、寒いなぁ。」

ううう…って震えちゃうほど、背中や肩が寒かったけど、
頑張って着替えて、それから ご飯も食べなくちゃ、と
日頃以上に意欲的。

  だってだってネ?
  早く起きてご飯食べて、進さんトコ行かなくちゃ。

もう一人でバスに乗って行けるようになった。
バスに乗る前に桜庭さんかマネージャさんに電話して、
何番線かを確かめなさいってゆーのも忘れてないし。

 「ご飯は 何食べよっかなぁ。」

昨日のフライ、残ってないかな。
あ、パスタのサラダは残ってるよね。
ママ いっつも多めに作って、
次の日にサンドイッチにしてくれるものvv
そんな心積もりをしつつ、
とりあえずはと、パジャマの上に子供用サイズの
王城シルバーナイツのエンブレム入り
グラウンドコートをひょいと羽織り。
まずはキッチンを攻略だとばかり、
お2階のお部屋からお廊下へ出る。
すっかりと明るい中、
階段を降りかかろうとしたセナくんだったが、

 「……………え?」

降り切ったところのお廊下に、桜庭さんが立っていて、
こちらを見上げてたのが“ありゃりゃあ”ってお顔になって。

 「ありゃ、起きたんだ。」

ちょっぴり困ったように笑ってる。
それから、リビングの方を向いて、

 「進、セナくんが降りて来ちゃったよ、お出迎えしなきゃ。」

  ―― え?

何なに何のお話し?と、
大きなお目々を見開いて、
上の階の取っ掛かりのところに立ち尽くしておれば、

 「ああほら、靴下もはいてねぇ。」

がちゃりと開いたドアの音と一緒に、
風邪引いちまうぞと笑ったのが。
吹き抜けになってるホールの奥向き、
セナくんのいるところからも見渡せる玄関から
ウィンドブレーカ羽織って入って来た蛭魔くんで。
おしゃれなカフェのお兄さんみたいに、
片手をお顔のとこに掲げて、
ちょっと大きめの化粧箱を持って来ておいで。
恐らくはケーキらしきその箱を、
下駄箱の上のスペースへと置いてから、
ジャケットのポッケへ手を突っ込むと。
“人を伝書鳩扱いすんなっての”とぶつくさ言いながら、
クラスメートから預かったらしき何枚かの封筒を取り出し、
文句を言いつつも、
ケーキのそばへと並べるところが、何とも律義な子悪魔さんで。

  ………というか、

 「え?え? 何で皆いるの?」

ワケが判らないまんま、
二人を交互に見やってたセナくん。
此処って王城の合宿所じゃないよね。
だったらヒル魔くんがいるのがおかしいしと、
混乱しかかっているようなのへ、

 「何でって、当たり前じゃんか。」

おいおいと肩をすくめる蛭魔くんが…そのままその視線を投げた先。
リビングからすたすたやって来た大きなお兄さんが、
答えも抱えて来てくれて。

 「瀬那。」

選挙のときに立候補した人が掛ける“タスキ”っていうの、
右肩から左のわきへと斜めがけしていた進さんで。
そこには、あのね?

  小早川瀬那くん、お誕生日おめでとうっ!って

随分な達筆で書いてあって。

 『セナをエスコートする役なら、これ掛けないとなvv』

蛭魔くんがそんな風に言って、
自分で持って来たらしいのを差し出したんだとか。

 「…でも、ヒル魔くん、今日は賊学行くって……。」

言ってたのになと思ったセナくんだが、
それはそれこそ、妖一くんお得意のフェイクだったわけで。

 『サプライズにするったっても、
  判りやす過ぎる日にちだから苦労したぞ?』

いつもいつもクリスマス直前だ、
クリスマスと言えばってセットになってるようなもんだしよと。
思い出せてない振りをする方が
沽券にかかわるようで難しかったというよな言い方をした蛭魔くんは、
葉柱さんと二人して、
今朝早くから玄関先とお庭にイルミネーションを飾ってくれてたそうで。
サンタのネオンやツリーみたいなデザインを意識してあるから、
そのままクリスマスまで飾っとけとのこと。
桜庭さんは、
王城シルバーナイツの皆さんから預かって来たっていう
プレゼントも渡してくれたその上で、
雪の結晶が織り込んである、カシミアのマフラーを“どうぞvv”ってくれたし、
進さんも、自分の後ろに大きな大きな水族館シリーズの縫いぐるみを抱えてる。

 「うわぁ、嬉しいよぉっ!」

はしゃぐあまり、階段から飛び降りかけた やんちゃな坊やを、
難無く受け止めたお不動様でしたが、
そのまま10分ほどお説教になったのはここだけのお話です。(笑)




  
HAPPY BIRTHDAY! TO SENA!!



     〜Fine〜  13.12.21.


  *ちなみに、今年のクリスマスボウルは 12月23日です。

   とて。
   進さん、今度はどんな海産物をプレゼントするのでしょうか。(笑)
   ペンギンにイルカにマンボウに、
   エイにアシカに、カニにサメ…。
   もうあらかた揃ってると思うので、
   今度は大小をコンプリートか?
   それって…セナママには凄げぇめーわくかも。(大笑)
   セナくんのお部屋だけでは
   もはや足の踏み場がないほどになってたので、
   別に1部屋もらってたりしてね。
   進さんの“すいぞっかん”
   なんてプレートが提がってたら微笑ましいです。


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